コロナ禍において、オフィスを解約、または返却する動きが顕著になってきています。特に、大企業のリモートワーク普及により、大型ビルの解約が増えています。いままでは30坪から50坪程度の物件が多かったのですが、最近では100坪を超えるような大型ビルでの「居抜き退去」も増えています。
”居抜き”は飲食店などの店舗物件では馴染みがありましたが、賃貸オフィス業界ではまだまだ事例は少ない状況です。
居抜き退去は一般的なオフィスの退去とどこが違うのか、トラブルにならないうようにするにはどこに気を付ければ良いのか。ご案内していきます。
「居抜きで退去したい」というご相談が増えています
リモートワークに切り替えた企業では、「入居してからまだ間もなくてもオフィスを解約してしまう」という事例が増えています。以前は居抜きに対して消極的だった貸主も、まだ新品のような内装のため、「壊してしまうのはもったいない」という考えから、「居抜きでの退去」について承諾を得られるケースが増えてきました。
当社が運営する居抜きオフィスサイト「vivit」の物件登録数も2020年4月以降で急激に増加しています。
一般的な賃貸借契約による明渡し、原状回復とは
一般的は賃貸借契約では原状回復が必要なケースがほとんどです。賃貸借契約書の「明渡し・原状回復」の条文に詳細が記載されていると思います。また、【原状回復基準書】や【原状回復仕様書】という書面にて、工事項目を記載している場合もあります。
賃貸オフィスの場合、経年劣化による損耗も原状回復の対象となります。原状回復の主な項目としては、内装造作の解体・撤去、床の張替え、壁の張替えもしくは塗装、天井の塗装、補修、照明の位置戻し、エアコンクリーニング、管球交換、配線撤去、水回りのクリーニングなどがあげられます。
工事費用の目安は、内装やビルの規模、貸主により異なりますが、相場は5万円/坪から10万円/坪と言われています。
100坪だと、500万円から1000万円程度の工事費用が発生することになります。
また、工事期間は、通常の物件で1カ月間程度かかります。大規模ビルや大手ゼネコンの場合は2カ月間程度かかるケースもあります。原状回復の工事は賃貸借契約の期間内に行う必要があります。
※原状回復工事の費用を削減する方法もございます。
居抜き物件は原状回復工事は必要?
居抜きで退去する場合は、内装造作や設備をそのまま承継するケースが多いため、前述のような原状回復は必要ありません。原状回復義務を後継テナントに承継することになります。後継テナントは将来退去する際は原状回復が必要になります。
ただし、引越し後に全体的にクリーニングはしたほうが良いと思います。費用は前入居者が負担するケースが多いです。
とはいえ、原状回復工事を行う金額と比較すると少額で済ませられると思います。
居抜きで退去する場合に重要な3つのポイント
居抜きでの物件は、原状回復工事が免除されるので、退去テナントにとっては大きなメリットです。ですが、重要なポイントが3つあります。
あくまでテナント側からのお願いであること
賃貸借契約には「明渡しの際は原状回復をすること」と明記されているので、”居抜きで退去したい”というのはあくまでテナント側の要望です。「後継テナントが見つかれば居抜きでの退去を承諾してください」ということを貸主(オーナー)に相談しましょう。相談するタイミングはなるべく早い方が良いです。また、貸主の承諾を得ないで後継テナントを募集するのはトラブルになる可能性があるのでやめましょう。
空室率が上昇している市況下では、居抜きで貸すことは貸主にとってもメリットがあります。※なぜメリットがあるか、詳細はお問合せください
使いやすいオフィスレイアウトであること
居抜きで後継テナントを募集する際、使いやすいレイアウトプランであることが重要です。個性的なレイアウトプランだと後継テナントがなかなか決まらないということもあります。
また、現状のレイアウト図や入居した際の工事図面があると話がスムーズに進みます。
シンプルな受付や会議室、清潔感のある執務エリアであれば後継テナントが現れる可能性は高いと思われます。
スケジュール管理、解約予告期間
居抜きで退去するには段取りが非常に重要です。契約によっては契約禁止期間や、そもそも中途解約できない契約形態もありますので注意が必要です。
※定期借家契約でご入居の場合もご相談ください。
居抜き物件は双方にメリットあり!
居抜きでの退去・入居は、借主(テナント)にとっても、貸主(オーナー)にとっても、メリットのある形態です。
原状回復工事は時間もお金もかかりますし、廃棄物もたくさん出るので環境にもよくありません。
「居抜き」はオフィスの賃貸借の方法として、今後も普及していくものと思われます。