居抜きオフィスとは、前のテナントが設置した内装やオフィス家具などを引き継ぎ、新たなテナントがそのまま使用するオフィスタイプです。
通常のオフィス移転では、内装工事、打ち合わせ、家具や什器の購入が必要ですが、居抜きオフィスではこれらの費用を大幅に削減できるのが魅力です。しかし、居抜きオフィスには通常の賃貸借契約以外に造作譲渡契約を締結する必要があるなど、移転にかかるコストや手続きが異なる点があります。イレギュラーな要素が多いため、注意が必要です。
居抜きオフィスは市場に出回り始めたばかりで、まだ選択肢として一般的ではないため、仲介業者の実績、知見や経験も企業によってばらつきがあります。今回は、オフィス移転の中でも、特にややこしい居抜きオフィスにおける仲介業者の選び方のコツについてご紹介します。
居抜きオフィス移転における仲介業者の重要性
居抜きオフィスを探す際には、信頼できる仲介業者を選ぶことが非常に重要です。仲介業者は、物件の紹介から契約手続き、引渡しまでの一連のプロセスをサポートする役割を果たします。
特に居抜きオフィスの場合、前の入居者との調整や内装の引き継ぎに関する専門的なサポートが必要になる場合があります。よって、経験豊富な仲介業者に依頼するに越したことはありません。
居抜きオフィスに慣れている仲介業者を選ぶべき理由
居抜きオフィスに慣れている仲介業者を選定することが重要な理由は、オフィス移転にかかる費用や時間を最小限に抑え、スムーズに移転を進めるためです。オフィス移転は会社の規模によっては数百万円から数千万円のコストがかかる大きなプロジェクトです。
仲介業者は、物件選定や契約手続き、引渡しまでの各ステップで適切なアドバイスを提供し、移転後のトラブルを防ぐためのサポートを行います。また、良い仲介業者は、オフィス物件の最新情報を豊富に持っており、希望に合った物件を迅速に紹介してくれるため、理想のオフィスを見つける確率が高まります。
居抜きオフィスへの移転を検討している場合、通常のオフィス物件よりも契約や手続きが複雑になることが多いです。慣れていない業者に依頼すると、トラブルの解決に時間がかかり、最終的に移転スケジュール自体が遅れてしまうということにもなりかねません。
仲介業者選びの3つのポイント
仲介業者を選ぶ際のポイントを大きく分けて3つご説明します。
①会社の実績と専門知識の量
まず、取り扱い実績と専門知識が重要です。オフィス移転の知識が豊富であることに越したことはありません。取り扱い実績が豊富な業者は、物件の選定から契約手続き、引渡しまでの流れを熟知しており、スムーズな移転をサポートしてくれます。HPや運営サイトに実績を掲載している業者もありますので、確認してみると良いでしょう。また、過去の取引事例や顧客の声をチェックするのも有効です。
さらに、参考程度に知っておくと良いのが不動産業者の宅建業免許番号の数字です。例えば、東京都知事免許の場合、「東京都知事免許(3)第〇〇〇〇〇号」という形で掲載されています。この(3)の部分は、免許更新回数を示しており、原則5年に1回の更新が必要です。したがって、(3)であれば3回更新している=約10年間宅建業に従事している企業という見方ができます。宅建業は一定の欠格要件を満たすと免許が取消され、原則5年間は免許が再取得できません。したがって、カッコ内の数字が大きいほど更新回数が多く、信頼の一つの目安になります。
ただし、免許取消される業者は滅多に出会うことはないため、免許番号はあくまでも検討材料の一つとして参考にしてください。他にも多くの要素を総合的に判断し、信頼できる業者を選ぶことが大切です。
②営業担当のコミュニケーションスキル
次に、担当者のコミュニケーションスキルの確認です。居抜きオフィス移転は担当者との密なコミュニケーションが欠かせません。担当者が親身になって相談に乗り、わかりやすい提案をしてくれるかどうか、物件のメリットだけでなくデメリットも正直に伝えてくれるかどうかを見極めることが大切です。
コミュニケーションスキルが高い営業マンだと、物件の新着情報やキャンペーン情報などが集まりやすく、結果、お客様がお得により良い物件に出会える機会が増えます。また、物件に申込を入れる際に貸主(ビルオーナー)と交渉を行いたい場合にも力を発揮してくれることが多いです。実際に話をしてみて、信頼できると感じる担当者を選ぶことが成功の鍵です。
③業者の得意分野を知る
最後に、業者の得意分野を知ることが大切です。仲介業者ごとに得意とする物件の種類やエリアがあります。例えば、全国を幅広く扱っている業者や、東京都内など首都圏に強い業者、さらに居抜きオフィスやセットアップオフィスなどの内装付きオフィスに強い業者もいれば、300坪以上の大型物件に強い業者などさまざまです。
自社の希望する条件に合った物件を多く扱っている業者を選ぶことで、理想のオフィスを見つけやすくなります。業者のホームページや運営サイトを確認し、自社のニーズに合った業者を選定することが成功の鍵です。また、過去の実績や取り扱い事例をチェックすることで、業者の得意分野や強みを把握することができます。自社の移転目的や条件に最適な業者を選ぶことが、スムーズで満足のいくオフィス移転を実現するための重要なポイントとなります。
良い仲介業者の見分け方
自社に合った仲介業者を見つけるためには、複数の業者と並行して打ち合わせを行い、それぞれの提案や対応を比較することが重要です。良い仲介業者を見分けるのに、おすすめのポイントは以下の4点です。
- 居抜きオフィスの仲介実績が豊富かどうか
- 担当者のコミュニケーションスキルや提案力が高いか
- 仲介手数料とコストパフォーマンスは見合っているか
- 物件資料は見やすいか
初回の打ち合わせでは、各業者の取り扱い物件の種類やエリア、実績について詳しく話を聞きましょう。居抜きオフィスは通常オフィスと比較するとイレギュラーな対応が多いため、知見がある業者であることが求められます。また、担当者のコミュニケーションスキルや提案力もチェックポイントです。
仲介手数料とコストパフォーマンスの比較も重要です。仲介手数料は業者ごとに異なるため、複数の業者の料金を比較し、コストパフォーマンスが良い業者を選びましょう。手数料が安くてもサービスが充実していない場合は、後々のトラブルにつながる可能性があるため、料金だけでなくサービス内容も総合的に判断することが大切です。
また、物件資料も見分ける材料の一つです。後で自分たちだけで見返したときに比較しやすい資料になっているかを確認しましょう。居抜きオフィスは、物件ごとに承継できる家具や設備が異なります。それが一目で分かるような資料が理想的です。
もしあなたが経営者ではなくオフィス移転担当者である場合、その資料を使って上司や管理職レイヤーに説明しなければなりません。説明しやすい資料を提供してくれる業者は、顧客目線で様々な提案をしてくれる可能性が高いといえます。
悪い仲介業者の特徴
悪い仲介業者を見極めるためには、いくつかの特徴に注意する必要があります。
まず、居抜きオフィスの仲介実績が乏しい業者は、経験が不足しているため、トラブルが発生しやすくなります。また、担当者のコミュニケーションスキルが低く、相談や提案が不十分な業者も避けるべきです。さらに、物件のメリットばかりを強調し、デメリットに言及しない業者は、信頼性が低い可能性があります。
現職の営業マンに「このような営業担当には依頼したくない」というアンケートをとった結果、多かったのが以下の特徴です。
- レスポンスが遅い・顧客側から質問しないとアクションしない(24%)
- +αの提案がない・知見や経験が足りない(14%)
- 清潔感がない(14%)
- 何度も同じことを聞いてくる(9%)
居抜きオフィスでは、前テナントとの認識の食い違いが最もトラブルになりやすい点です。「この家具は残してもらえると聞いていた」「一部にリース家具が含まれていた」といった問題が発生しないように、業者選定には注意が必要です。
まとめ
良い仲介業者は、契約後もサポートを続けてくれます。移転後に問題が発生した場合、迅速に対応してくれるかどうかは重要なポイントです。特に、設備の不具合や内装のトラブルが発生した場合、仲介業者のサポートがあると安心です。
居抜きで入居した物件で盲点になってしまうのが、退去時の原状回復工事費用です。入居時はお得に入居できても退去時に想像上の費用が発生してしまう場合もあります。入居時に退去のことまで考えるのは難しいですが、経験豊富な担当者に依頼すれば、物件選定時に原状回復費用も考慮した提案をしてもらえます。
最後に、良い仲介業者とは長期的な関係を築くことができます。オフィス移転は一度きりのイベントではなく、将来的にも移転や拡張が必要になることがあります。信頼できる仲介業者と良好な関係を維持することで、将来的な移転や拡張の際にもスムーズに対応してもらえるでしょう。