事務所や店舗などのテナントを退去する際、オーナーから居抜きの許可が出なければ、必ず原状回復の為の工事を行わなければなりません。テナントの賃貸契約では、オーナー側が原状回復工事の業者指定をするといった内容の制約が定められている事がほとんどです。したがって、借主側が少しでも工事費用を抑える為に、業者を指定や変更することはできません。
この契約によって、悪徳の工事業者とオーナー間の癒着による建築資材の水増し請求や工事に手配する人員を必要以上に多くし人件費を上乗せするなどの不正に見舞われる危険もあるため、借主側は本当に適正な金額で工事を行っているのか不信を抱き、納得がいかないとクレームをつけトラブルに発展する事例が多々見られます。
しかし、オーナー側にもこの契約を提示し締結させるやむを得ない事情があります。それは、借主が原状回復工事を安い業者に依頼した結果、破損や汚れを元の状態まで戻さなかった事や増設された照明や配線などがそのまま放置させれてしまった事、夜間でも工事を行う為に他のテナントからクレームが入るなど、借主と不要なトラブルが起きてしまう事です。テナントはあくまでもオーナーの所有物であり資産であるため、次の借り手を見つける為にも、作業工程を把握でき、綺麗な状態に原状回復させる業者に依頼をするのは当然の事です。
それ故に、借主側がどんなに不信を抱き抗議をしたとしても、一度サインを交わしてしまった契約なので、覆ることはほとんどありません。後になって公開をしない為にも、テナント契約時にしっかりと約款を吟味し、関わっている工事業者を確認しリサーチする必要があります。面倒であってもテナントを契約する際、このような作業を行う事が重要です。
そして何よりも、オーナーと借主が、時間をかけてディスカッションを行った上で賃貸契約を結び、双方が信頼関係を築き上げる事が、後のリスクを回避する為にも最も大切な事です。