オフィス移転の際に発生する費用は引っ越し費用だけではありません。使用していたオフィスを原状回復する必要があり、それに伴う費用を念頭に入れておかなければなりません。内装構築で発生する工事の種類は思いの外広範囲にわたります。建築工事や内装工事、電気設備工事、防災設備工事、空調設備工事、給排水設備工事などがあげられます。しかし使用した全ての部分の工事費用を負担する必要性はなく、定められた工事区分に基づいて対処することが大切です。工事区分はビルによって異なるため、オフィスの賃貸契約を結ぶ際に貸方基準という区分票を確認しておかなければなりません。
オフィスの内装構築に関する工事では工事区分が設定されており、区分によって工事を行う人や費用を負担する人が定められています。しかし費用を負担する人と工事を担当する業者の決定権を持つ人が同じであるとは限らないのが特徴です。工事区分の一つであるa工事では、貸主側が内装工事の費用を負担しなければなりません。そして施工業者の指定も貸主がするものとされています。建物の一部や設備が工事対象範囲となっていて、エレベーターなどの共用部分、各階に備えられているトイレや共有スペースと専有部を隔てる壁、扉などが対象です。
a工事は入居時に発生するオフィスの内装構築にはほとんど関わりのない工事区分となっています。退去時の原状回復義務はあるものの、a工事の区分に当てはまる部分の費用は退去時に支払う必要がありません。一方移転先の工事区分も移転費用に大きく影響を及ぼします。工事区分はビルによって異なるため移転先の区分によっては以前の賃貸オフィスでは発生しなかった思いもよらぬ費用が必要となるケースがあることを念頭に置いておきましょう。
工事区分はオフィスを借りる際の重要事項となっていて、退去時と入居時に必要となる費用を大きく左右します。またa工事の正しい知識を持つことで退去時に余計な費用を負担する事態に陥りません。