オフィス移転の費用相場はどのくらい?主要項目ごとに解説!

オフィスの移転は企業の成長や変化を象徴する大きなステップです。嬉しい反面、大きな決断であり、多くの労力と費用が伴います。オフィスの移転をスムーズに進めるためにも、事前に各項目の費用を把握し、しっかりと計画を立てることが重要です。今回は、オフィスの移転に伴う費用の相場や種類、注意点について詳しく解説します。

目次

新オフィスの入居にかかる費用

新オフィスの入居にかかる費用

まずは、新オフィスの入居にかかる初期費用を把握しておきましょう。新しいオフィスに入居する際にかかる主な費用には以下のようなものが挙げられます。

新オフィスの入居にかかる費用
  • 預託金(敷金・保証金)
  • 礼金
  • 前払家賃
  • 保証委託金
  • 仲介手数料
  • 火災保険料

かかる費用は、会社の規模やオフィスの大きさによっても異なり、もちろん地域差もあります。

預託金(敷金・保証金)

預託金(敷金・保証金)は、オフィスのオーナーに一定の金額を無利息で預け入れることです。主に、家賃滞納や現場復帰にかかる費用を確保するための費用として扱われます。費用相場を、下記にまとめました。

大手デベロッパー物件 賃料の12ヶ月
ファンド物件 賃料の6~12ヶ月分
個人オーナー物件 賃料の3~12ヶ月分

費用は、一般的にオフィスを退去するときに返還されますが、契約内容によって異なることを覚えておきましょう。例えば、償却の設定がある場合は償却分を引いた額を差し引いて返還されます。また、物件によっては保証会社を利用すると、保証金が0ヶ月になることもありますので、仲介業者に確認しましょう。

礼金

礼金とは、賃貸借契約を結ぶ際に、借主からオーナーに対して支払うお礼金です。礼金の費用相場は、家賃の1ヶ月から2ヶ月分程度です。礼金は昔からの習慣で、オフィス物件を貸してくれたことに対して、オーナーに感謝の気持ちを表す目的があります。そのため、退去時に返済されません。

近ごろはオフィス物件を不動産などの仲介業者を介して契約することが多く、オーナーと直接顔を合わせる機会がほとんどありません。そのため、礼金0の物件も増えてきています。

大手デベロッパー物件 なし
ファンド物件 なし
個人オーナー物件 なし~賃料の2ヶ月分程度

前払家賃

オフィスを契約した月の家賃を事前に払います。1ヶ月分を丸々負担しなければならない場合もあれば、日割りが適用される場合もあり、異なります。

保証委託料

保証委託金とは、賃貸借契約において入居者が保証会社に委託した際に発生する金額です。保証委託金の相場は保証会社や物件によっても異なりますが、家賃の1〜2ヶ月分程度です。

オフィスを借りる際、一般的に連帯保証人を立てなければなりません。しかし、連帯保証人がいない場合は保証会社に委託することで契約が可能となります。保証会社に委託することでオフィスを借りやすくなる、敷金保証金を少なくできるというメリットがあります。

仲介手数料

新しいオフィスを探したり契約したりする際に、不動産会社(仲介会社)に委託した場合、不動産会社に仲介手数料を払う必要があります。

仲介手数料の費用は、家賃の1ヶ月分です。上限金額が宅建業法によって家賃の1ヶ月分と定められています。 不動産会社を利用することで、オフィス物件の紹介・案内だけでなく重要事項の説明や契約の手続きなども行ってくれるため、スムーズに新しいオフィスに移転できます。

火災保険料

賃貸オフィスのほとんどの物件では、火災保険の加入が義務付けられています。オフィスに移転した際は、火災保険料を別途で取り分けておく必要があるでしょう。一般的な相場は2年契約で、1〜3万円程度です。

火災保険料は、加入した会社やプラン内容によっても異なります。金額の幅が広いのは、保証内容が異なるためです。契約前に内容を確認し、必要なプランを選びましょう。

新オフィスの入居工事にかかる費用

新オフィスの入居工事にかかる費用

新しいオフィスの契約が決まったら、新しくシステムを導入したり必要なものを準備したりと、環境を整える必要があります。どんなオフィスにしたいのか、会社の規模などによって費用は異なります。

工事の種類について
  • A工事:オーナーの費用負担で行う工事
  • B工事:テナントの費用負担だが工事業者はオーナーが指定する業者(ゼネコンがほとんど)
  • C工事:テナントが選定した業者に依頼できる工事(費用負担はテナント)

本項目では以下、主な工事内容や内訳について詳しく見ていきましょう。

新オフィスの入居工事にかかる費用
  • 電気工事費用
  • LAN、ネットワーク、電話工事費用
  • 内装工事費用
  • セキュリティ工事費用
  • 空調、防災工事費用

電気工事

オフィスを使用するのに必要な電気工事にかかる費用相場は、1坪あたり3万円〜4万円程度です。オフィスを運営するのに必要な電気容量を計算し、分電盤から回路を分けて配線したり、電気容量が足りない場合は増設したりします。

このとき、複合機、電気容量が大きい電化製品を設置する箇所は、別途の回路を作る必要があります。そのため、ある程度の配置をイメージして伝えることが大切です。電源工事は基本的にA工事ですが、電気容量が足りない場合の増設工事はB工事です。

工事費用の相場 30,000円~40,000円/坪

LAN、ネットワーク、電話工事費用

 オフィスに必須なネットワーク環境の工事です。こちらは設置箇所数で計算します。

電話工事

オフィスワークに必要なLAN、ネットワーク、電話工事も欠かせません。LANや光ケーブルなどを設置する場合、それぞれネットワークを1箇所設置するのにつき1万5000円〜2万円程度の費用が必要です。

電話の設置にも費用がかかります。新規購入だと一台につき4万円程度、電話の移設だと2万円程度を見ておいたほうがよいでしょう。

オフィスの移転に伴って管轄する基地局が変わる場合は、電話番号を変更することも考慮できます。これらの工事は一般的にC工事ですが、ビルの制限が厳しい場合は規則が設けられている可能性があります。

内装工事費用

壁紙や床の張り替えやパーテーションの設置など、仕事をしやすく快適な環境を整えるためには内装工事が欠かせません。費用は1坪×10万円〜 50万円程度が目安です。

ただし、壁紙や床材の種類、デザインなどによって内装工事費用は下記のように大きく異なります。

内装工事費用のイメージ
  • 【費用をなるべく抑えたい】
    • 1坪×10万円以上
  • 【シンプルで機能的なオフィスにしたい】
    • 1坪×25万円以上
  • 【デザイン性の高いオフィスにしたい】
    • 1坪×50万円以上

できるだけ予算を抑えたい場合は、必要最低限の工事を行いシンプルなデザインにしましょう。一方で、デザイン性の高いものになればなるほど費用はかさみやすい傾向です。

また、状況によって異なりますが、内装工事は一般的にC工事です。

セキュリティ工事費用

オフィス内に設置するセキュリティ費用は、数万円〜70万円程度です。特に執務室など、セキュリティ管理を徹底したい箇所に設置する企業は少なくありません。セキュリティシステムは、暗証番号式や指紋認証などさまざまで、セキュリティの機能も異なるためです。

当然ながら、セキュリティ性が高くなればなるほど費用が高くなります。ICカード認証のセキュリティシステムなどは数万円〜20万円、指紋や静脈認証のセキュリティシステムの相場は数万円〜70万円程度です。

空調、防災工事費用

空調工事では、吹き出し口の増設や移設を行います。内装工事のレイアウトによっては、間仕切りと空調が被ることがあるからです。また、冷房専用の空調を新たに取り付けなければならないこともあるでしょう。空調の工事費用は、工事内容によって大きく異なりますので、工事会社に確認しましょう。空調工事は、一般的にB工事です。

非常用設備やスプリンクラーを増設するなど、防犯工事費用もかかります。特に、内装で会議室など個室を作った場合はスプリンクラーを増設しなければなりません。

さらに、非常灯や火災報知器、消化器などの設置が必要です。火災報知器1台につき3万円以上かかります。誘導灯や消化器などの非常用設備を全て最初から用意する場合は、50万円~100万円ほどかかることも少なくありません。

現オフィスの引き渡しにかかる費用

新オフィスの環境を整える準備に加え、現オフィスを引き渡すための段取りを組む必要があります。現オフィスの引き渡しにかかる主な費用には、以下のようなものが挙げられます。

現オフィスの引き渡しにかかる費用
  • 現場復帰工事費用
  • 明け渡しまでの家賃や水道光熱費など
  • 引越しに関する費用
  • 廃棄物に関する費用
  • 住所変更に発生する諸費用

では、それぞれにかかる費用の具体的な内容を見ていきましょう。

原状回復工事費用

元々使っていたオフィスを、入居した当時の原状に回復するための、必要な工事をします。原状回復工事にかかる費用は、オフィスの規模によって異なります。小・中規模のオフィスだと1坪あたり3万円〜5万円程度、大規模オフィスだと1坪あたり5万円〜15万円程度が相場です。オフィス物件や状態によって異なりますので、見積もりを取って費用を確認しましょう。

また、原状回復工事は、オーナーかビルの管理会社が指定した業者に依頼しなければならない場合が多く、基本的にB工事です。

明け渡しまでの家賃や水道光熱費など

借りていたオフィスをオーナーに引き渡すまで、家賃や水道光熱費は発生します。状況によっては、新オフィスの家賃と重複して支払う期間がある可能性も考えられます。さらに、賃貸オフィスを契約期限内に解除したケースでは、解約金が別途で生じることも珍しくありません。

旧オフィスの家賃や水道光熱費を計算するとともに、解約金についても事前に確認しましょう。

引越しに関する費用

旧オフィスから新オフィスにかかる引越し費用も、考慮しなければなりません。引越し費用は従業員1人に対し2万円〜3万円が相場とされています。オフィス内にエレベーターがあるか、階段や通路の幅に荷物を動かすための十分なスペースがあるかなど、引越しの費用を決定する大切なポイントです。例えば、貨物用エレベーターがあるビルだと、引越し作業をスムーズに行えるでしょう。

引越し業者に頼む場合は、何軒かの業者に見積もりを出してもらいましょう。

廃棄物に関する費用

旧オフィスで使用していたデスク、チェア、収納棚、電子機器などのうち、新オフィスで使用しないものもあるでしょう。これらを廃棄する際には処理費用がかかります。

廃棄物を処理する際は、産業廃棄物管理票(マニフェスト)発行してくれる業者に依頼するとよいでしょう。業者に依頼すると、機密書類やハードディスクなども安全な方法で処理してくれるので安心です。

廃棄物の処理にかかる費用相場は4トントラック1台分で10万円程度です。しかし、機密書類やハードディスクの処理など特殊な廃棄処理の料金設定や対応は業者によって異なります。見積もりの際に確認しましょう。

住所変更に発生する費用

オフィス移転をすると住所変更に関する役所での手続きをしなければならず、その際に費用がかかります。一連の手続きを司法書士に頼む場合は、別途費用が必要です。手続きに加え、住所変更に伴って、名刺や封筒、パンフレット、ホームページの内容などを書き換える必要があります。

住所変更に関する詳しい手続きや費用に関しては次の項目で解説します。

その他オフィス移転にかかる費用

その他オフィス移転にかかる費用

前述しましたが、オフィスが移転し住所変更をすると、役所での手続きや資料作成などの作業を行います。その際にも費用が発生することを、覚えておかなければなりません。本項目では、それぞれ詳しく見ていきましょう。

引越しの際に役所に提出する書類作成費用

オフィス移転で住所が変わると、法務局に登録免許税を支払う必要があります。移転前のオフィスと移転先のオフィスの管轄する法務局が同一だと3万円、異なると6万円です。また、税務局、年金事務所、労働基準監督署、社会保険事務所、都道府県税事務所、市町村などにそれぞれ必要な届出を行います。その際に、それぞれ数百円〜数千円の費用が必要です。

いろいろな手続きをスムーズに行うために、司法書士に書類の作成から手続きまでを任せる会社も少なくありません。司法書士に任せる場合は3万円〜5万円程度の費用が必要です。

名刺や会社案内などの再作成費用

オフィスが移転すると、従業員の名刺や会社のパンフレット、ホームページの情報など会社の住所が印刷されているもの再作成する必要があります。

取引先へ新しい移転先に関するお知らせを発行する場合、作成と発送にも費用がかかります。こまごまとした作成費用を忘れがちですが、再作成費用を予算に組み込むことも重要です。

オフィス移転の費用に関する注意点

上記でも考慮したとおりオフィス移転時にはさまざまな費用が発生します。事前にしっかりと把握しなければ、思わぬ落とし穴があり、想定よりも費用がかかる可能性があるでしょう。本項目では、オフィス移転の費用に関する注意点をいくつか解説します。

オフィス移転の費用に関する注意点
  • 移転の準備は計画的に進める
  • 使える備品は再利用しコスト削減する
  • 移転後に発生する費用も把握しておく
  • 補助金や助成金は有効に活用する
  • 複数社から見積もりを取り、怪しい業者に注意する

移転の準備は計画的に進める

オフィスの移転に関して費用に関する落とし穴を避け、無駄な費用を抑えるためには計画的な準備は不可欠です。例えば、移転日から逆算して工事過程や引越しに関して余裕を持ったスケジュールを立てましょう。

内装工事費、電気工事費、現場回復費用など上記で挙げた費用のうち、当てはまるものを全て把握して予算を立てましょう。余裕を持って計画することで、思わぬトラブルにも対応しやすくなります。

使える備品は再利用しコスト削減する

旧オフィスで使用していたものを全て処分するのではなく、使える備品を再利用するのもおすすめです。新オフィスで心機一転、全ての備品を新しくしたいと考えることでしょう。しかし、新オフィスへの移転にはさまざまな費用が発生するため、どこかでコストを削減しなければ予算オーバーとなる可能性も少なくありません。デスクや椅子、応接セットなど再利用できるものは工夫して使用しましょう。

また、前の企業が使っていた内装や備品がそのまま残っている居抜き物件を選び、上手に利用することもできます。

移転後に発生する費用も把握しておく

オフィスの移転となると、引越し費用や工事費用、現場復帰にかかる費用などがすぐに思い浮かぶでしょう。しかし、移転後にも発生する費用について把握しておくことで、予算オーバーになる危機を避けられます。

例えば、立ち退きの日まで払い続ける必要がある旧オフィスの家賃や光熱費、移転後の住所を印刷した名刺やパンフレットなど、手続きにかかる費用などです。移転後にも引き続き費用が発生することを理解して、予算を組みましょう。

補助金や助成金は有効に活用する

移転に伴う費用を抑えるために、補助金や助成金を有効に活用しましょう。例えば、「ものづくり補助金」は設備投資や開発に関係する費用を補助しています。生産性向上や事業再構築のためのオフィス移転が、補助金の対象となる場合があります。オフィスを移転する際は、当てはまる補助金がないか調べ、積極的に利用しましょう。

複数社から見積もりを取る

オフィス移転に関して引越しや、内装業者、電気工事業者などさまざまな業者が関わります。B工事のように決定権がないケースもありますが、業者を決める際に複数者から見積もりを取りましょう。

複数声をかけることで相場がわかります。レイアウトと見積もりを提出してもらい、提案の良い会社を選択しましょう。

費用を計算してスムーズにオフィス移転計画を進めよう!

オフィスを移転するさまざまな過程に伴って、費用が発生します。余裕を持ったスケジュールを立てて、必要な費用を全て把握し予算を組むなら、スムーズにオフィス移転計画を進められます。費用を抑えるためには、再利用できる備品を新オフィスでも利用したり、補助金や助成金を利用したりできるでしょう。さらに、業者に見積もりを頼む際は、安さだけにとらわれず、複数の業者に頼み信頼できる業者を決定するのがおすすめです。

移転の流れやスケジュール感を確認したい場合は下記より「移転マニュアル」などの資料を無料ダウンロードしていただけます。また、直接ご相談したい方は情報収集段階でももちろん構いませんので、弊社までお気軽にご連絡ください。

目次