【サステナビリティ】オフィス移転先にサステナブルな賃貸オフィスビルを選ぶ

自然災害が増え、気候変動への関心が高まる中、SDGsやESGに関するコミットメントが多く見られるようになりました。

賃貸オフィスビル業界においても、「再生可能エネルギーの導入」や「環境配慮技術の導入」、「建物の環境性能を評価・認証を受ける」という動きが普及してきています。

今回は、”サステナブルなオフィス移転”という視点で賃貸オフィスビルのサスティナブルな取り組みをご紹介させて頂きます。

目次

環境省|リーディングテナント行動方針

環境省では、カーボンニュートラル実現のため、テナント企業による脱炭素化への取組を取りまとめた「リーディングテナント行動方針」を策定し、促進しています。その中で、【入居先の選定】について、以下のように触れています。

”テナント起点でCO2排出量の削減を進めていくには、まず、入居先の選定時点で「エネルギー性能が高い」「再エネの活用が可能」といったビルを選択することが考えられる。

1.エネルギー性能が高いビルを選定

ZEBやBELS、CASBEE、LEED、DBJ Green Building認証など、建物の環境性能で、高認証を取得しているビルへの移転を推奨しています。

ZEBとは、ネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略称です。快適な室内環境を保ちながら高効率設備等により省エネルギーに努めることで、同規模で標準的な設備仕様の建築物と比較し、一次エネルギーの年間消費量が大幅に削減されている建築物のことを指し、削減量に応じて、ZEB、Nearly ZEB、ZEB Ready、ZEB Orientedの4つに定義されます。

CASBEE(建築環境総合性能評価システム)とは、国土交通省主導のもと開発された、建築物の環境性能を評価するシステムのことです。評価は、Cランク(劣っている)B-、B+、A、S(大変優れている)の5段階でランク分けされています。

DBJ Green Building認証とは、環境・社会への配慮がなされた不動産(「Green Building」)を支援するために、日本政策投資銀行(DBJ)が創設した認証制度です。不動産のサステナビリティをESGに基づく5つの視点から評価しています。

最近の新築ビルは、いずれかの環境評価を得ている物件がほとんどですね。ただ、築年数が経過しているビルでも、BEMS(ビル・エネルギー・マネジメント・システム)の導入などにより、エネルギーの効率化を図っている事例もありますので、必ずしも新築ビルでなければならないというわけでもないと思います。

2.再エネが活用できるビルを選定

リーディングテナント行動方針では、移転先を検討する際に再エネ活用の可否を検討基準にすることを推奨しています。

再生可能エネルギーを導入しているテナントビルが増えています。

従来、再エネを活用しているビルの割合は「テナントビル」よりも「自社ビル」の方が高い状態でした。一方、企業が本社を構えているのはテナントビルの方が多く、テナントビルの再エネ活用は大きな課題となっていました。そこで、昨今では大手デベロッパーをはじめ、再生可能エネルギーを導入するビルが増えてきています。さらに、賃料が高い大型ビルや新築ビルだけでなく、中規模ビルでも導入しているケースがあります。

3.安全性、健康・快適性、知的生産性の確保

建物における健康・快適性、知的生産性などの向上に対する配慮に加え、非常時のエネルギー供給等によるBCP強化、感染症対策など安心・安全に対する配慮がなされていることを入居先の検討条件とすることが推奨されています。

建物の健康・快適性、知的生産性等を評価・認証する指標として、 CASBEEウェルネスオフィス評価認証、 WELL認証 等があります。健康経営等を目指す企業の増加等によって、取得件数も増加しています。

新築ビルのBCP対策は、非常時の貸室内への電源供給が一般的に

東日本大震災以降、新築オフィスビルでは、非常時のBCP対策として、電源供給対策を講じるケースが増えています。中圧ガスを使用したコジェネレーションシステムや、オイルタンクを実装することにより、非常時でも事業を継続できるよう準備されています。従来は共用部だけの電源供給、もしくは、非常用コンセントが限られていたり、追加電源工事が必要でしたが、最近の新築ビルではすべてのコンセントが非常時も使える物件が出てきています。使用できる電気容量や時間にはまだバラつきがありますので、物件ごとに確認する必要があります。

廃棄物を減らす

通常のオフィス移転では、入居工事でも退去時の原状回復工事でも大量の産業廃棄物が発生します。デスクや椅子、キャビネットなどはリサイクルできる場合もありますが、造作壁や床材などは廃棄することがほとんどでしょう。

廃棄物を削減できる方法として、「居抜きで移転」や「セットアップオフィスにする」という方法があります。

居抜きオフィス「vivit」

居抜きでのオフィス移転とは、前テナントが設置した造作を後継テナントが引き継ぐ形式の移転方法です。入居テナントは内装工事費用が削減でき、退去テナントは原状回復工事費用を削減することができます。コロナ禍で「使用年数が短い、おしゃれできれいな物件」が増えており、需要と供給の双方が増加しています。

セットアップオフィス「RAKNA」

セットアップオフィスとは、貸主が内装造作を事前に施してから貸し出す形式です。セットアップオフィスの場合、退去する際も造作壁は撤去する必要が無いため、廃棄物の削減に繋がります。プロのデザイナーが設計したおしゃれなオフィスですので、採用に力をいれているベンチャー企業などに人気があります。

賃貸オフィスの取り組み事例

新虎安田ビル(2024年2月竣工予定)

耐震性能

免震構造を採用し、耐震レベルは建築基準法の1.5倍。免震層の積層ゴムと大型のオイルダンパーにより地震のエネルギーの大部分を吸収、建物上部に入力する地震力を低減することにより、建物の変形を耐震建物や制震建物の1/3程度に抑えます。設定方針として、大地震後、躯体を補修することなく建築物を使用できることを目標としています。

鉄骨の鋼管の中に高強度コンクリートを充填した高い剛性と耐力を有するCFT柱を採用しています。

中間免震を採用

断水時でもトイレが利用可能

雑用水槽容量を約3日分、排水貯水槽を3日分確保。さらに、マンホールトイレの設置(6ヶ所)により災害時や下水管断絶時でもトイレのご利用が可能となります。

非常時の電源供給

災害時もエレベーター、スプリンクラー、排煙機などビルの機能や非常時の設備を維持するために、非常用発電機を設置。万一外部からの送電が途絶えた時も、下記設備に電源供給し、帰宅困難者対応およびテナントの事業継続に必要な機能を最大72時間維持できるよう計画しています。

「ZEB Ready」認証を取得

建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)における「ZEB Ready」認証を取得しており、環境配慮などの次世代に求められるスマートビルを目指しています。

SDGsに対する取り組み

上記の他にも、SDGs達成に向けて、さまざまな取り組みを行っています。

水色:ビルとしての取り組み例(水資源、エネルギーへの取り組み)

オレンジ色:利用者に対する取り組み例(室環境向上への取り組み、障害者等への対応)

緑色:地域に対する取り組み例(持続可能なまちづくりへの取り組み)

さいごに

いかがでしたでしょうか。世の中の潮流に合わせて、賃貸オフィスビル業界でもサステナビリティに対する取り組みが増えています。とはいえ、取り組みの進み具合はデベロッパーやオーナーによって異なります。再生可能エネルギーの導入状況や居抜きオフィスの基本的な流れなど、ご不明点等ございましたらお気軽にご相談ください。

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