オフィスを『自宅兼事務所』にした際のメリット・デメリットとは?
現代の働き方の多様化に伴い、『自宅兼事務所』という働き方が注目を集めています。
このスタイルは、自宅での仕事とオフィス業務を一体化させることで、ワークライフバランスの改善やコスト削減が期待できます。しかし、一方でプライバシーや集中力の確保などの課題もあります。
本記事では、『自宅兼事務所』を採用する際のメリットとデメリットを詳しく解説し、その実践に向けたポイントを考察します。
「自宅兼事務所(ホームオフィス)」とは?
自宅兼事務所(ホームオフィス)とは、住居としての機能と仕事場としての機能を兼ね備えた空間のことを指します。近年、インターネットやデジタル技術の発展により、仕事をする場所に対する柔軟性が高まり、自宅で仕事をする人々が増えています。特に、自営業者やフリーランス、テレワークを導入する企業の従業員などが、この形態を取り入れています。
自宅兼事務所の概念は、もともとは自営業者や芸術家などが自宅で仕事をするスタイルから発展しました。しかし、近年ではインターネットの普及とデジタル技術の進化により、さまざまな業種で自宅での仕事が可能になりました。また、都市部のオフィス賃料の高騰や通勤時間のロス、ワークライフバランスへの意識の高まりなどが、自宅兼事務所の普及を後押ししています。
海外では、特に欧米諸国で自宅兼事務所の活用が進んでいます。アメリカでは、シリコンバレーのスタートアップ文化の影響もあり、自宅でビジネスを始めることが一般的です。一方、日本では、テレワークの導入が進む大企業を中心に、自宅兼事務所が注目されています。また、新型コロナウイルス感染症の影響で、在宅勤務が急速に広がり、自宅兼事務所の重要性が再認識されています。
自宅兼事務所(ホームオフィス)は、働き方の多様化に伴い、今後さらに普及が進むと予想されます。個々のライフスタイルに合わせた働き方を実現するために、自宅兼事務所の活用は有効な選択肢の一つと言えるでしょう。
どのような業種が「自宅兼事務所」で仕事が可能?
自宅兼事務所での仕事が可能な業種は多岐にわたります。以下は、自宅での業務が比較的容易なビジネスの一部をご紹介いたします。
- 店舗を必要としない
- 商品や在庫を抱える必要がない
- 作業を自宅でも行える
- 顧客の訪問がメインではない
- 自ら顧客のところに営業や作業に出向くことが多い
ビジネス形態が以上の項目にあてはまれば、オフィスを自宅兼事務所にして開業しても、問題はないと思われます。
とくにプログラマー、アプリ開発者、ネットショッピング経営などITやインターネット関連の業種の方は、他人を気にせず制作に集中できる自宅兼事務所は最適でしょう。また、カメラマン、スタイリスト、漫画家などクリエイター的なスキルを活かした専門業種の方も、自分だけの仕事環境がつくれるので、事務所を借りずに自宅兼事務所で業務が可能です。
上記以外の業種でも、ワークスタイルを工夫すれば自宅兼事務所での開業が可能な場合もありますので、あえて自宅で業務をお考えの方は、自宅兼事務所のメリット・デメリットを検討したうえで、「自宅をオフィスとして仕事はできないか」とこだわって、ワークスタイルを決めるとよいと思います。
オフィスを自宅兼事務所にした際のメリット
(1)初期費用の節約、ランニングコストを抑えられる
賃貸オフィスを借りる場合には、月々の家賃や入居時にかかる初期費用(礼金・保証金・敷金・備品など)がかかってきます。なかでも保証金の相場は、家賃の6~12ヶ月分が相場になりますので、かなり高額になります。また、荷物の搬入などにも費用がかかりますし、自宅をオフィスにすることで、それらの費用を大幅にカットすることができます。
(2)時間短縮する事が出来る
自宅をオフィスにすることで、事務所物件を探す必要がなく、開業までの時間が短縮できます。また、当然通勤する必要がなくなり、毎朝の満員電車から解放され、通勤にかかる時間やお金を節約することができます。
(3)自宅家賃や光熱費の一部を経費に計上できる
自宅をオフィスとして利用することで、家賃や光熱費などの一部を経費として計上することができます。オフィスとして利用している部屋の面積などを基準に、家賃や光熱費などを事業運営のための必要経費とすることができ、節税にもつながります。
(4)家事や育児と仕事の両立がしやすい
子育て中の方や介護が必要なご家族がいらっしゃる方は、自宅をオフィスにすることで仕事との両立がしやすくなります。また、家事や趣味などとの両立もしやすくなりますので、より自分の時間を作りやすくなり、仕事の時間を自由に調節し、スケジュールを組むことができますので気持ちにも余裕が生まれます。
オフィスを自宅兼事務所にした際のデメリット
「自宅をオフィスとして利用する」――これは多くの起業家やフリーランサーにとって魅力的な選択肢として浮かび上がります。確かに、通勤時間の削減や家賃コストの節約など、多くのメリットが考えられます。
しかし、この選択をする前に、自宅兼事務所の運営には一体どのようなデメリットが潜んでいるのか、しっかりと理解しておくことが必要です。このセクションでは、自宅をオフィスとして利用する際の潜在的なリスクや課題について詳しく解説していきます。
(1)公私の区別がつきにくい
自宅兼事務所の場合「いつでも仕事ができる」反面、仕事とプライベートの区別がつかなくなり、いわゆる「メリハリのない」状態になりがちです。
自宅にはテレビをはじめ仕事には関係ない誘惑も多いため、自分自身をきちんと管理することができる人でなければ、効率良く仕事をするのは難しいかもしれません。また逆に、いつまでも仕事を続けてしまい、運動不足になったり、生活のリズムが崩れてストレスがたまるということも起こります。
(2)会社としての信用力低下
ビジネスの相手によっては自宅をオフィスにしている場合、信用が低くみられることがあります。信用面でマイナスの印象を抱き、取引を見送ってしまうというリスクもあります。
(3)プライバシー上の問題
名刺やホームページに自宅の所在地を記載することは、結果として自宅の場所を不特定多数の人に公表していることになります。特に若い女性の方などは、ストーカー被害などを受けてしまう危険性が生じますし、自分以外の家族と同居をしている場合には、安全面での不安が生じることも念頭に置いておく必要があります。
(4)契約により法人登記出来ない場合がある
賃貸住宅を事務所として法人登記をする場合、登記ができるか否かをオーナーに確認する必要があります。物件登記時の使用目的に、居宅のみで事務所を登録していなければ登記の項目変更が必要になるためです。
また契約上できない場合もありますし、賃貸住宅を事務所使用する場合には、何かしら追加の敷金などを要求されることもあります。その他、ポストや表札に会社のプレートを設置しても良いかも確認する必要ありますので、注意が必要です。
自宅兼事務所を設置する際の注意点
自宅兼事務所を設置する際には、住居としての機能と仕事場としての機能を適切に分けることが重要です。
また、法律や自治体の規制によっては、自宅でのビジネス活動に制限がある場合があるため、事前に確認が必要です。
さらに、プライバシーの保護やセキュリティ対策も重要な検討事項です。
自宅兼事務所は、働き方の自由度が高く、ライフスタイルに合わせた仕事ができる一方で、仕事とプライベートのバランスを保つことが課題となります。自分に合った働き方を見つけることが成功の鍵となります。
自宅でやることに抵抗がある方におすすめなオフィスの種類
最後に「自宅の住所を公開することに抵抗がある…」「家具をそろえたり、経費の按分をするのがややこしい」という方におすすめのオフィスをご紹介します!
バーチャルオフィス
今、どんどん人気を高めているのが「バーチャルオフィス(virtual office)」です。
これは物理的に存在する事務所ではなく、事務所の機能だけをレンタルする「仮想上の事務所」です。
もちろん、机やイスなどの什器類は一切ありませんが、住所や電話番号をレンタルすることができるため、名刺やHPなどにも記載することができます。法人登記もできるので、起業の際にも利用することが出来ます。
サービスオフィス・レンタルオフィス
一昔前と比べて認知度が大分あがってきているのが「サービスオフィス」などのレンタルオフィスです。
賃貸物件のように敷金や礼金なども不要で、ビジネスに必要なオフィス家具などを準備する必要もなく、オプションで法人登記をすることもできます。
まとめ
『自宅兼事務所』は、通勤時間の削減やコスト削減など多くのメリットを提供しますが、プライバシーの確保や仕事とプライベートの境界線の曖昧さなど、留意すべきデメリットも存在します。
この働き方を成功させるためには、適切な環境整備や自己管理が重要となります。『自宅兼事務所』を検討する際は、メリットとデメリットを十分に理解し、自分のライフスタイルや仕事の性質に合った選択をすることが求められます。