働き方改革・人材活用戦略の一環としてのオフィス移転とは?自社のカルチャーにあった最適なオフィスの設計方法
働き方改革や人材活用戦略は、企業の持続的な成長と発展にとって欠かせない重要な取り組みです。その中でも、オフィス移転は、単なる場所の変更ではなく、自社のカルチャーを見つめ直し、あるべき姿に向けた変革を進めるための絶好の機会と言えるでしょう。
しかし、オフィス移転を成功させるためには、単に新しい場所に移るだけでは不十分です。自社のカルチャーにあった最適なオフィスを設計することが重要なのです。そのためには、まず自社のカルチャーを深く理解し、どのような働き方が求められているのかを明確にすることが必要です。
そこで本記事では、働き方改革・人材活用戦略の一環としてのオフィス移転について解説するとともに、自社のカルチャーにあった最適なオフィスを設計するための方法について紹介します。オフィス移転を検討している企業の経営者や人事担当者、また、働き方改革に関心のある方々にとって、有益な情報が得られるはずです。
オフィスに対する考え方の変化
オフィスに出社するということは、働く人にとって「ネガティブ」な要素なのかどうか。これは働く人の価値観によるかもしれません。
コロナ前はオフィスに出社するのが当たり前であり、コロナ禍では「出社できない」という状況になりました。
このような真逆の状況で、働く人の価値観にどのような影響があったのでしょうか?
実はコロナ禍を経て、働く人々の価値観に大きな変化が起きていることが、複数の調査で明らかになっています。
「Workforce Preferences Barometer」での調査結果では、以前は給与や評価といった対価的な項目が重視されていましたが、現在は「心身の健康やウェルビーイングを気遣ってくれる会社で働くこと」が2位に浮上し、回答者の56%が重要視していることが示されました。
同様に、Michael Pageの「人材トレンド2022 THE GREAT X アフターコロナ時代の人材戦略」でも、社員の定着に必要な要素として、「働きやすい職場環境(2位/44%)」、「同僚やチームの人間関係(3位/35%)」、「ワークライフバランス(5位/29%)」が上位に挙げられています。
これらの結果から、企業が優秀な人材を確保し、維持するためには、単に報酬面での魅力だけでなく、従業員の心身の健康やウェルビーイング、快適な職場環境、良好な人間関係、ワークライフバランスへの配慮が欠かせないことが分かります。
コロナ禍を通じて、働く人々のニーズや価値観が大きく変化しており、企業はこうした変化に適切に対応していく必要があります。
ですが、働き方とオフィスに関するあるアンケート調査結果では、現在のオフィス環境が理想に近いと考える日本の回答者の割合は39%にとどまりました。一方、世界全体では47%の回答者が現在のオフィスに満足していることが明らかになりました。
この結果は、日本の企業が従業員の満足度を高めるようなオフィス環境の整備において、世界的な水準に追いついていないことを示唆しています。コロナ禍を経て、従業員がオフィスに求める要素はより多様化・高度化しているにもかかわらず、多くの日本企業はこうした期待に十分に応えられていないのが現状です。
今後、優秀な人材の確保と定着を図るためには、従業員のニーズを的確に把握し、それに合わせたオフィス環境の整備や働き方の改善に取り組むことがより重要になることでしょう。
オフィス移転による環境変化
上記のように、現在のオフィスに不満を持っている人が多いのであれば、働く「場所」を変えるというのは、効果の大きい改善方法です。
オフィス移転には様々な目的とメリットがありますが、ここでは働き方という観点から4つの理由について詳しく説明します。
1. 業績向上による従業員の増加
企業の成長に伴い、従業員数が増加することで現在のオフィススペースが手狭になることがあります。これは、オフィス移転の最も一般的な理由の一つです。従業員数の増加に対応し、さらなる成長を見据えて、より広いオフィススペースを確保することが目的となります。
従業員数の増加は、コミュニケーションの取り方にも影響を与えます。オフィス移転と同時に、レイアウトを適切に設計することで、従業員間のコミュニケーションを活性化し、協力体制を強化することができます。
2. オフィス環境を整えて生産性アップ
働く環境は、従業員の生産性に大きな影響を与えます。オフィス移転を機に、従業員が快適に働けるオフィス環境を整備することで、仕事の効率や集中力、モチベーションの向上を図り、組織全体の生産性を高めることができます。
例えば、暗くて狭いオフィスや窓のないオフィスでは、従業員の士気は高まりにくく、活気も出ません。そのような環境から広く明るいオフィスへ移転することで、従業員の働く意欲を高めることができます。また、近年では従業員の健康やウェルビーイングに配慮したオフィスづくりが推奨されており、オフィスの緑化(バイオフィリックデザイン)などに注力する企業も増えています。
3. ブランディング
オフィス移転は、企業のブランディング戦略の一環として行われることもあります。
例えば、IT企業であれば渋谷や六本木、デザインやアパレル系企業であれば表参道や青山などに拠点を置くことで、ブランドイメージを高めることができます。また、そのようなエリアには同業他社も集まりやすいため、情報交換や交流が活発になり、取引先との打ち合わせも行いやすくなります。
さらに、オフィス移転自体が企業の成長を象徴するイベントとなり、社内外にポジティブなメッセージを発信することができます。自社ならではの内装やインテリアをデザインすることで、企業のイメージアップや認知度向上にもつながります。
近年では、オフィスデザインだけでなく、自社ブランドや企業文化を象徴するアートを導入する企業も増えています。オフィス環境は優秀な人材を獲得する上でも重要な要素となっているため、採用ブランディングと連携したオフィスづくりも欠かせません。
4. 優秀な人材の確保
オフィス移転は、採用戦略の一環として行われることもあります。
求職者にとっても、既存の従業員にとっても、働きやすいオフィス環境は仕事へのモチベーションややりがいにつながります。そのため、優秀な人材の採用だけでなく、離職率の低下にも役立ちます。
例えば、従業員専用の無料自動販売機、マッサージ室、休憩室、ジム、医務室など、様々な福利厚生を備えたオフィスは、付加価値として優秀な人材を惹きつける可能性が高まります。また、交通の便が良い都心部で働きたいと考える人も多いため、利便性の高い立地へ移転することも採用戦略の一つとなり得ます。
このようなメリットがあるオフィス移転ですが、働き方改革や人材活用戦略の一環としてメリットを詳しくお伝えします。
オフィスをどのように活用するかは企業から働く人に対する「メッセージ」
人材活用戦略とは、企業が保有する人的資源を最大限に活用し、組織の生産性と競争力を高めるための方針と施策の総称です。人材は企業にとって最も重要な資産の一つであり、その能力を十分に引き出し、適材適所で配置することが、企業の成長と発展に不可欠です。
この戦略には様々な要素がありますが、オフィスに対する企業の考え方や活用方法も大きな要素の一つといえます。
企業が人材にどのような活躍をしてほしいのか、どのような方法で貢献してほしいのかがオフィスの活用方法に現れているともいえます。
また働き方改革に関してどのように取り組むかも、オフィスに対する考え方に現れているといえます。
働き方改革とは、長時間労働の是正、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方の実現、多様な人材雇用の推進などを目的とした法律と、それに関連した取り組みのことを指します
企業は、これらの法律や指針に基づいて、様々な方法で働き方改革に取り組んでいます。
その中でも、オフィス移転による環境整備は、働き方改革の施策の一つとして効果的に活用されています。
オフィス移転により、従業員のコミュニケーションを促進するためのレイアウトの工夫や、快適な働き方を実現するための設備の導入などが行われることがあります。
こうした環境整備により、従業員の生産性やモチベーションの向上、ワークライフバランスの改善などが期待できます。
働き方改革とは「どこで」「どのように」働くかという設計であるといえます。
これは社員側が自由に設計できるものではなく、企業側が経営戦略や人材活用戦略・働き方に対する価値観に基づいて設計するものです。
オフィスをどのように活用するかというのは企業側からの「働き方」「人材活用」に関する指針であり、オフィス移転ではそれがメッセージとして現れているといえます。
これからどのような働き方をしてほしいかがオフィス移転によって明確になるのです。
例えば、人材採用に注力したいと考えるのであればであれば、築年が経過した旧オフィスからのハイスペックオフィスビルへ移転を行い、階層別のフリーアドレス席の導入、コミュニケーション活性化を目的にした本格的なカフェスペースの導入、ドレスコードの自由化といった従業員の働きやすさを追求した数々の施策を実施し、人材採用において最先端の業務に関われる面白さや給与面などの雇用条件だけでなく、労働環境の改善にも目をむけるべきでしょう。
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目に見えない「カルチャー」が目に見える「オフィス」で形づくられる
企業文化や風土という概念があります。企業文化や風土は、組織のパフォーマンスや従業員のモチベーションに大きな影響を与える重要な要素です。
これらを総称してカルチャーと呼ぶとすると、カルチャーを変革すること・していくことは、企業の持続的な成長と発展にとって永続的な課題と言えます。
カルチャーは一朝一夕には変わりません。
カルチャーを変えるためには、日々の社員の行動を変える、言い換えれば働き方を変えることが重要です。なぜなら、カルチャーは、組織の構成員である社員一人ひとりの行動の積み重ねによって形成されるものだからです。社員の行動が変われば、それが積み重なることで、組織全体のカルチャーも変わっていくのです。
今まで書いてきたように働き方を変えるためには、まずは環境から変えることが重要です。オフィス移転は、そのための絶好の機会と言えるでしょう。新しいオフィスに移ることで、これまでの慣れ親しんだ環境から離れ、新しい環境に適応するための行動変容が促されます。
例えば、フリーアドレスの導入により、社員の座席を固定せず、プロジェクトごとに最適なメンバーが集まって仕事ができるようになります。これにより、部署間のコミュニケーションが活性化し、協働意識が高まることが期待できます。
また、オフィスのレイアウトや設備も、社員の行動に大きな影響を与えます。例えば、カフェスペースやラウンジを設けることで、リラックスした雰囲気の中で、社員同士が気軽に交流できる環境を作ることができます。これにより、アイデアの交換や問題解決が促進され、イノベーションが生まれやすくなります。
さらに、オフィス移転を機に、ドレスコードの自由化や、リモートワークの推進など、働き方に関する様々な施策を実施することもできます。これらの施策は、社員の自律性を高め、ワークライフバランスを改善することで、エンゲージメントの向上につながります。
このように、オフィス移転は、カルチャー改革の重要なきっかけとなります。
ただし、オフィス移転だけでカルチャーが変わるわけではありません。重要なのは、自社がどのようなカルチャーになってほしいかを明確にし、それに向けた環境づくりを意識的に行うことです。
例えば、イノベーションを重視するカルチャーを目指すのであれば、オープンイノベーションを促進するためのスペースを設けたり、失敗を許容する風土を醸成したりすることが求められます。
また、ダイバーシティ&インクルージョンを推進するカルチャーを目指すのであれば、多様な人材が活躍できる環境を整備し、一人ひとりの個性や強みを尊重する風土を育むことが重要です。
オフィス移転は、カルチャー改革の出発点に過ぎません。移転後も、社員の行動変容を定着させ、望ましいカルチャーを醸成していくための継続的な取り組みが必要です。
経営陣のリーダーシップと、現場の主体的な参画があって初めて、真の意味でのカルチャー改革が実現するのです。
まとめ
オフィス移転は、単なる物理的な場所の変更ではなく、企業のカルチャーや働き方を再定義する重要な機会です。コロナ禍を経て、働く人々の価値観やニーズが大きく変化しており、企業は従業員の満足度を高めるオフィス環境の整備に注力する必要があります。
オフィス移転には、業績向上、生産性向上、ブランディング、人材確保など、様々な目的とメリットがあります。特に、人材活用戦略や働き方改革の観点から、オフィスの活用方法は企業の考え方やメッセージを反映するものであり、オフィス移転はそれを具現化する絶好の機会となります。
オフィス移転は、カルチャー改革の出発点でもあります。新しい環境に適応するための行動変容が促され、イノベーションや協働意識の向上につながります。ただし、真の意味でのカルチャー改革を実現するためには、経営陣のリーダーシップと、移転後の継続的な取り組みが不可欠です。
企業が持続的な成長と発展を遂げるためには、オフィス移転を戦略的に活用し、従業員のエンゲージメントと生産性を高める必要があります。オフィス移転を通じて、自社のカルチャーや働き方を見直し、より良い組織づくりに取り組むことが、これからの時代を勝ち抜くための鍵となるでしょう。
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