オフィス移転が企業の成長戦略上重要である3つの理由

オフィス移転は、単なる物理的な場所の変更ではありません。それは、企業の成長戦略を支える重要な意思決定であり、長期的な視点に立った投資判断が求められます。

オフィス移転が企業の成長戦略上、重要である理由は大きく分けて3つあります。ここでは、その3つの理由について詳しく解説していきます。

目次

オフィス移転の判断は「経営者の仕事」

オフィス移転は総務部門の仕事。そのように考えておられる経営者の方は少なくないのかもしれません。

もちろん、細かい事務作業などは総務部門や担当セクションの仕事ですが、オフィスを移転するかどうかは経営者の重要な仕事の一つです。

オフィス移転の判断が、企業の成長戦略にとってなぜ重要であるのかについて、お伝えできればと思います。

なぜオフィス移転が成長戦略上重要なのか

なぜオフィス移転が成長戦略上重要なのか

オフィス移転は、単なる物理的な場所の変更ではありません。企業が目指す目標を達成するための重要な手段の一つなのです。

企業の目的は、様々な考え方がありますが、企業を存続させること、そのために事業を成長させていくことです。オフィス移転は、そのような究極の目的を達成するための戦略的な選択肢の一つに過ぎません。

もちろん事業拡大のためには、オフィス移転以外にも多くの取り組みが必要です。優秀な人材の採用、資金調達、製品・サービスの改善など様々な施策が必要となります

オフィス移転を検討する際には、まず事業拡大という上位の目標を明確に意識することが重要です。この上位目標を達成するためにどのようにオフィス移転という手段を使うのかを、他の施策の優先度を勘案しながら経営判断として選択することが重要です。

例えばオフィス移転で目指すのがコミュニケーションの改善による組織変革、であれば他にも人事制度の改訂、コミュニケーション活発化施策の実行、1on1面談の設計など、他にもとりうる手段があります。

またオフィス移転は「お金のかかる」施策でもあります。移転費用、敷金、賃料の増額など様々な費用がかかります。費用対効果があるのかを経営者として厳しい目で見なければなりません。

ですので、オフィス移転で目指す効果が本当にオフィス移転でしか得られないのかを、冷静に判断する必要があります。

オフィス移転の効果については、次のような内容があると言われています。

新しい環境での働きやすさによる生産性の向上や離職率の低下

オフィス移転は、社員の働きやすさを追求する上で非常に重要な要素となります。空間の最適化、充実した設備、通勤の利便性向上、自然光や眺望の向上などにより、社員のストレスが軽減され、作業効率やモチベーションの向上が期待できます。

コミュニケーションの活性化

新しいオフィスでは、部署間の距離が縮まり、オープンなオフィス空間やコミュニケーションスペースの確保により、社員同士のコミュニケーションが促進されることがあります。

これにより、情報共有や意思決定の迅速化、イノベーションの促進、チームビルディングの強化などが実現されます。

企業ブランディングの向上

オフィス移転は、企業のブランドイメージの向上に大きく貢献します。新しい環境や設備の導入により、企業のイメージをアップデートし、ステータスを向上させることができます。また、顧客や取引先へのアピールや地域社会への貢献も可能となります。

ビジネスチャンスの拡大

オフィス移転によって、新規顧客獲得や地域のビジネスネットワークへの参加、競合企業との差別化、事業拡大のためのスペース確保、海外進出を考慮したロケーション選定など、新たなビジネスチャンスが生まれます。

コスト削減もしくは効率化

新しいオフィスへの移転は、不動産コストの最適化、省エネルギー設備の導入、経費削減による利益向上、効率的なオフィス運営、人材採用コストの削減など、コスト削減と効率化の機会を提供します。

このような効果があると一般的には言われていますが、効果のすべてを同時にかなえることは難しいでしょう。

また、上記の効果は事業拡大のための手段としては、直接的に機能するよりも間接的に機能する部分がほとんどです。

どの効果をメインで目指していくのか。その判断は企業の成長戦略としてどのような選択をとるのかによって変わってきます。

そのため、「オフィス移転をなんのためにするのか」を徹底的かつ根本的に考えた上で、上記の効果のうち何を目指していくのかを決めることで、オフィス移転をより「意味のある」ものにすることができます。

そこで、オフィス移転が企業の成長戦略上重要である理由や成長戦略上の位置づけについて、3つの理由から根本的に考えてみましょう。

オフィス移転を積極的に進めるべきかどうかの判断の参考になれば幸いです。

  1. 企業としてどのような戦略をとるのかによってオフィスのあり方は変わるから
  2. 経営者の「働き方」についての考え方があらわれるから
  3. 綿密な事業計画を考えるきっかけになるから

以上1つずつ説明いたします。

オフィスのあり方は戦略が反映される

オフィスのあり方は戦略が反映される

①企業としてどのような戦略をとるのかによってオフィスのあり方は変わるから」についてですが、企業の全社戦略・事業戦略やビジネスモデル、企業としての強みによって、オフィスの場所・広さ・内装なども変わってきます。

例えばIT企業だとしても、エンジニア間の協力・協同が企業としての強みであったり、自社サービスをCS部門と改善することを目指していたりする場合は、風通しのいい、部署間の壁が物理的にもないオフィスがよいかもしれません。

ですが、同じIT企業だとしても、個々人の技術力が強みであり組織内の協同関係がそこまで求められなく、むしろ営業力を強みとする会社であれば、エンジニアには広い執務スペースを用意し、なるべく集中できる環境を用意したほうがよいかもしれませんし、オフィス移転するよりも営業パーソンへの待遇をよくしたほうがいいかもしれません。

また属人的なビジネスなのか、それとも付加価値型のビジネスなのかによってもオフィスの用途は変わってくるかもしれません、

属人的なビジネスであれば、どうしても売上の増大には人員の増加が必要になります。そうすると必然的に執務スペースも必要となり、企業の成長とオフィスの拡張は連動することになります。

このように事業の性質・自社の強み、他社との差別化の源がなんであるかによってオフィスの用途は変わってきます。

事業が拡大しているからといって、「広くてきれいなオフィス」に移転する必要はありません。その移転が成長に貢献・寄与しないと意味がないのです。

このように、オフィスのあり方は今後の成長戦略・経営戦略をあらわすものであるとも言えます。

プロモーション目的や、ブランディングという観点でオフィス移転をすることもあります。ですがこれもあくまで「人が差別化の源」であるビジネスの場合に必要なのであり、「採用目的もしくは離職率を下げるため」という事業上の目的があってからこそ機能するものです。

あくまで成長戦略上の有効な施策としてオフィス移転を位置づけるべきなのです。

どのような「働き方」を求めているのか

どのような「働き方」を求めているのか

②経営者の「働き方」についての考え方があらわれるから」、についてお伝えいたします。

経営者の「働き方」についての考え方というのは、裏返せば社員にどのような働き方を求めるか、ということでもあります。

もちろん①に書いたような成長戦略上からどのように働くべきか決まることもあります。

ですが、どのような形態のビジネスであれ、多くの場合経営者の「働き方」に対する考え方によって、社員に求める「働き方」は変わってきます。

例えば、出社を重視するのか、リモートワークを推奨するのか、会議は対面で行うべきなのか、オンラインで良いのか、全社員が月に一度集まるべきか、年に一度で良いのか、あるいは集まる必要がないのか、などです。

また、オフィスの「場所」を用意する必要があるのか、勤務時間中は管理・監視すべきなのか、自由にして良いのか、社員は管理しないとサボると考えているのか、そうでないのか。

これは事業戦略などで論理的・合理的に決まるものでもありません。経営者の価値観に基づく考え方によります。

そして、経営者の考え方は社員に求める「働き方」に色濃く反映されます。

もちろん「良し悪し」ではありません。経営者がそのような「働き方」を求めること自体が経営者の組織に対する考え方や組織戦略の表れともいえます。

意識的にせよ、無意識的にせよ、経営者が求めた「働き方」をすることが企業の競争力になると経営者自身が考えているからこそ、社員に経営者が考える「働き方」を求めているといえるのではないでしょうか。

もちろん、社員にとくに何も求めない、という社長もいることでしょう。この場合も、社員に「働き方」を求めたとしても、事業拡大・業績向上への相関がない、という経営者の判断によるものともいえます。

このように、オフィスというのは経営者の組織や働き方に対する考え方の表れともいえます。そのため、社員に対する働き方のメッセージとしてオフィス移転を位置づける必要があります。

自身が考える「働き方」にあったオフィス=働く場所にするために、オフィス移転をする、というメッセージでもあります。

このようなオフィス移転と働き方に関する考え方に一貫性がないと、「オフィスを拡大するのであれば給与として還元してほしい」「移転する意味がわからない」というような反応が起きてしまいかねません。

「オフィス移転することでこのような働き方をしてほしい、それは会社の成長のため、そして社員の成長のために必要なことである」

このような強いメッセージをオフィス移転にあわせて伝えることも重要です。

賃料・事業計画・資金繰り

賃料・事業計画・資金繰り

③綿密な事業計画を考えるきっかけになるから」、についてお伝えいたします。

「事業拡大をしてからオフィス移転するべきか」、「オフィス移転をしてから事業拡大するべきか」と悩んでいる方も多いでしょう。どちらの選択も正解だと考えます。

例えば、属人的なビジネスを展開し、人を増やすことが成長の重要な要素となるビジネスの場合、オフィス移転のための時間より、採用スピードが上回ることがあります。

人が増えたのに執務スペースがない、オフィス移転が半年後、という場合は業務はまわせるかもしれませんが、生産性は著しくおちるでしょう。

反面、人を増やしてもそこまで業績に影響がなかったり、新規人材が利益貢献するために時間がかかるようなビジネスの場合、オフィス移転という物理的な空間の拡張は急ぐ必要はありません。

オフィス移転は、事業拡大に伴う物理的なスペースの需要に対応するための重要な決定です。社員数の増加や新しい部門の設置などに伴い、より広いオフィススペースが必要になることがあります。また、立地や施設の改善によって、社員の働きやすさや生産性を向上させることもできます。

ただし、オフィス移転にはコストと時間がかかり、事業運営に一時的な影響を与える可能性があります。一般的に、オフィスの適正賃料は粗利(売上総利益)の20%以内と言われています。例えば、粗利1億円の会社であれば、年間2,000万円程度の賃料が目安です。

もし移転で賃料が倍になると、粗利も倍にしなければなりません。そのため、どのくらい売上を増やす必要があるのかを慎重に検討する必要があります。また、オフィス移転に伴う賃料増と人件費増はセットになることが多く、労働分配率が40%の会社の場合、賃料や人件費の増加が経費に大きな影響を与えます。

例えば、粗利1億円の会社で賃料が2,000万円から2,400万円に、人件費が6,000万円から7,200万円に増加すると、経費は1,600万円増加します。粗利率(売上総利益率)がどのくらいかにもよりますが、それだけの売上を作れる(増やせる)見込みがあるのかは十分な吟味が必要になります。

このように賃料と人件費は企業の販管費の中でも大きな割合をしめ、外注費などと違い支払いサイトもはやい(増えたら翌月に反映する)という性質のものであること、さらには敷金・保証金・移転費用などで一時的な負担増もあります。

このような事例がありました。

コロナ禍で急激に伸びたビジネスで、

  • サービス業であり、売上が伸びに比例して人が必要になるビジネスだった
  • 執務スペースが必ず必要になるので人が増えたらオフィスも拡張しなければならなかった
  • 売上の拡大による入金と、オフィスや人に関する費用の支払のタイミングがずれていった

このような状況で、売上の入金が支払に間に合わず、大幅な黒字を出していたのにもかかわらず、倒産してしまった企業がありました。典型的な成長の速度がはやすぎたための「黒字倒産」のケースです。

オフィス移転を考えるタイミングは、事業の重要な局面であることは間違いありません。そのため、綿密な事業計画を立て、売上拡大が見込めるか、経費増を吸収できるか、資金繰りに問題がないかをしっかりと検討する必要があります。

オフィス移転を決断する際には、業績や資金繰りが厳しくなることを認識し、その上で移転を決意することが経営者の重要な経営判断です。

まとめ

以上、オフィス移転の判断が、なぜ企業の成長戦略にとって重要であるのかについて、お伝えしてきました。

オフィス移転は、企業の成長戦略を加速させる重要な取り組みです。生産性の向上や人材獲得力の強化、ブランドイメージの向上など、多角的な効果が期待できます。また、イノベーションの創出や新規事業の展開など、企業の持続的成長を支える基盤としても重要な意味を持ちます。

そのため、オフィス移転の意思決定に当たっては、中長期的な視点に立った投資判断が求められます。単に目先のコストを削減するだけでなく、企業の競争力強化や価値創造につながる効果を総合的に評価することが重要です。そして、移転後も継続的な効果検証を行い、PDCAサイクルを回していくことが求められます。

経営者の皆様におかれましては、オフィス移転を単なるコストではなく、成長戦略上の重要な投資と位置づけ、適切な意思決定を行っていただきたいと思います。そうすることで、オフィス移転が企業の持続的成長と発展に大きく寄与することになるでしょう。

事業拡大という目的を持って、オフィス移転を行っていただき、さらなる成長を目指されることを応援しております。

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