【フリーレント】賃料が免除される期間の共益費はどうなる?
賃貸オフィスや商業物件を探す際、多くのテナントにとって魅力的なオファーとして登場するのが「フリーレント」です。この魅力的な特典の一環として、入居初期の賃料が免除される期間が設けられることがあります。
しかし、この期間中に気になるのが「共益費」の取り決めです。
本記事では、フリーレント期間中の共益費について詳しく解説し、テナントにとってのメリットや注意点を明らかにします。
フリーレントとは?
フリーレントは、賃貸物件の契約において、初めの数カ月間の家賃を免除する制度を指します。この制度は、賃貸物件を契約する際の契約者へのインセンティブや、入居を促進するための手段として導入されることが多いです。
特にオフィスの賃貸契約や、大規模なマンションなどでの新規入居時にフリーレントが設定されることがよくあります。これは、大きな物件やオフィススペースでは入居前の準備や内装工事に時間がかかるため、入居者がその期間中に賃料の支払いを免除されることで、移転や入居の決断を後押しする狙いがあるからです。
しかし、フリーレントの期間は物件や賃貸業者、地域や市場の状況によって異なりますので、物件を選ぶ際にはフリーレントの条件や詳細をしっかりと確認することが大切です。
フリーレント期間に共益費などはどうなる?
フリーレントと聞くと、賃貸物件に一時的に家賃がかからない、というイメージを持つかもしれませんが、実際のところはもう少し複雑です。ここで、その詳細について考察してみましょう。
フリーレント期間中の共益費に関する取り決めは、契約ごとに異なることが一般的です。一般的なケースとして以下の2つのケースが考えられます。
共益費は支払い継続する場合
まず、一般的にフリーレント期間中も共益費や光熱費は発生します。共益費とは、ビルの共用部分の維持や管理、セキュリティ、清掃などの費用を指します。この共益費は、テナントが利用するビルや物件の維持管理に直接関わる費用なので、フリーレント期間中でも免除されないことが多いのです。
しかしながら、一部の物件では「賃料に共益費が含まれる」という契約形態をとることもあります。この場合、フリーレント期間中でも「共益費相当額」として、例えば坪あたり3,000円~4,000円程度が請求されることが一般的です。この「共益費相当額」は、物件や地域、ビルのグレードなどによって異なることがあります。
つまり、賃料だけが免除され、共益費は契約通りに支払われます。つまり、テナントは賃料を支払わずに済む期間があっても、共益費については支出が発生する場合あります。
共益費も免除される場合
一部の物件では「完全フリーレント」という特約が存在し、これによって賃料だけでなく共益費相当額の支払いも免除されるケースもあります。テナントは一定期間、賃料と共益費の支払いを免除されるため、経済的なメリットが大きいです。このような特典を提供する物件は限られていますが、大変魅力的な条件と言えるでしょう。
フリーレントを考慮する際は、賃料のみならず、共益費やその他の費用についても確認を怠らないようにしましょう。各物件や契約条件によって、詳細が異なる場合があるため、細かな点までしっかりとチェックすることが求められます。共益費の扱いは契約次第で異なるため、確認が欠かせません。
フリーレントで契約した場合、契約期間中の途中解約に注意
フリーレントはテナント側にとって大きな魅力となる制度ですが、実はその背後には重要な条件や注意点が潜んでいます。
例えば、2年間の契約を結ぶ際に、フリーレント期間として3ヵ月間を設定すると、実際の契約期間は27カ月間となります。こういった契約の際、最も注意すべきポイントは、途中での解約に伴う違約金です。フリーレント期間分の賃料がそのまま違約金として請求されるケースが多いのです。
この違約金の制度は、テナント側が予期せず移転する際のリスクを考慮するためのもの。フリーレント期間を提供する貸主側のリスクをカバーするための措置とも言えます。したがって、2年以内に再度の移転を計画している場合、この違約金の存在を十分に意識しておくことが重要となります。
もっとも、この違約金の問題は、契約を更新した際には通常発生しなくなります。これは、初回の契約期間中に特定のリスクをカバーするためのものであり、更新時にはその必要がなくなるためです。
フリーレントは大変魅力的な制度ですが、その利用にあたっては上記のような点をしっかりと理解しておくことが求められます。
フリーレントを上手に活用するメリット
フリーレントは、初期の家賃免除という形で提供される賃貸契約の特典ですが、これを上手に活用することで、賃料の負担を軽減したり、移転や内装工事のコストを抑えることが可能となります。この制度がもたらすメリットを最大限に引き出すための考え方やヒントを、以下で詳しくご紹介します。
二重賃料を軽減できる
移転する際、新しいオフィスの内装工事や古いオフィスの原状回復工事には時間がかかります。この工事期間中も、当然のことながら、既存のオフィスの賃料は発生します。このため、移転先と移転元の契約期間が2カ月程度重複するケースは珍しくありません。
このような状況で気になるのが、賃料の二重払いです。しかし、フリーレントという制度を活用すれば、この問題をスマートに解決することができます。
フリーレントは、契約初期の数カ月間の家賃を免除してもらえる制度のこと。移転時にこの制度をうまく利用することで、新しいオフィスの賃料が免除される期間を工事の期間と合わせることができます。その結果、2つのオフィスでの二重払いを回避することができるのです。
例えば、移転先のビルで2カ月間のフリーレントを設定できれば、その期間は新しいオフィスの賃料は発生せず、古いオフィスの賃料のみを支払うことになります。
移転先の物件を選ぶ際には、フリーレントの有無や期間を確認し、計画的な移転を進めることで経済的な負担を軽減させる方法を考えてみましょう。
物件選定を均し賃料で考える
例えば、物件探しの予算を坪単価20,000円と設定しているとします。物件をいくつか見ている中で、とても気に入った物件がありましたが、その物件は坪単価23,000円です。予算オーバーだけどあきらめたくない…そこで、フリーレントを設定して、総支払賃料を契約期間で割り戻すという考え方ができます。
例として、2年契約で家賃が坪単価20,000円、共益費が3,000円、フリーレント期間が4カ月の物件を考えてみましょう。2年間の全家賃は、(20,000円×20カ月)+(3,000円×24カ月)で、合計472,000円となります。これを24カ月で平均すると、1カ月の坪単価は約19,667円。つまり、フリーレントを利用することで、希望の予算内に収めることが可能となります。
このように、物件の探し方や契約の組み方によって、希望する物件を予算内で確保することが可能です。ただし、フリーレントの期間やその他の条件は、物件や大家さん、管理会社によって異なるため、契約前にしっかりと確認しておくことが重要です。
貸主がフリーレントを設定する理由とは?
オフィス賃貸市場では、空室率の上昇という現象が起こることがあります。この際、貸主側はその空室を埋めるための様々な施策を考えざるを得ません。
もっともシンプルな方法は賃料を下げることでしょう。しかし、これはビルの資産価値にも影響を及ぼすため、貸主にとっては望ましくありません。そのため、賃料の引き下げはできるだけ避けたいと考えるのが一般的です。
このような背景から、現代の賃貸オフィス業界では「フリーレント」という施策を取り入れるケースが増えてきました。例としては、初めの「6カ月間家賃無料」といったオファーが目立ちます。更に、市場での競争が激しいエリアや物件では、一年間のフリーレントキャンペーンを行うことも。これは、テナント側の移転時の負担を大きく軽減するため、非常に魅力的な条件となっています。
このようなフリーレントキャンペーンは、その効果的なコストメリットから、テナント側が当初の検討エリア外であっても物件を検討する大きな動機となり得ます。
フリーレント早見表(均し賃料)
フリーレント期間を設けた場合の均し賃料を計算する早見表です。
共益費は4000円、契約期間は3年と想定しています。賃料単価ごとに、フリーレント1ヵ月、2ヵ月…といった期間を設けた場合の均し賃料が表示されています。
たとえば、賃料単価が20,000円の場合、フリーレント1ヵ月の均し賃料は19,556円、2ヵ月の均し賃料は19,111円となります。
この表を活用することで、フリーレント期間の違いが賃料にどのような影響を与えるかを簡単に把握することができます。
賃料単価 (共益費込み) | FR1ヵ月 | FR2ヵ月 | FR3ヵ月 | FR4ヵ月 | FR5ヵ月 | FR6ヵ月 | FR7ヵ月 | FR8ヵ月 | FR9ヵ月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
20,000 | 19,556 | 19,111 | 18,667 | 18,222 | 17,778 | 17,333 | 16,889 | 16,444 | 16,000 |
21,000 | 20,528 | 20,056 | 19,583 | 19,111 | 18,639 | 18,167 | 17,694 | 17,222 | 16,750 |
22,000 | 21,500 | 21,000 | 20,500 | 20,000 | 19,500 | 19,000 | 18,500 | 18,000 | 17,500 |
23,000 | 22,472 | 21,944 | 21,417 | 20,889 | 20,361 | 19,833 | 19,306 | 18,778 | 18,250 |
24,000 | 23,444 | 22,889 | 22,333 | 21,778 | 21,222 | 20,667 | 20,111 | 19,556 | 19,000 |
25,000 | 24,417 | 23,833 | 23,250 | 22,667 | 22,083 | 21,500 | 20,917 | 20,333 | 19,750 |
26,000 | 25,389 | 24,778 | 24,167 | 23,556 | 22,944 | 22,333 | 21,722 | 21,111 | 20,500 |
27,000 | 26,361 | 25,722 | 25,083 | 24,444 | 23,806 | 23,167 | 22,528 | 21,889 | 21,250 |
28,000 | 27,333 | 26,667 | 26,000 | 25,333 | 24,667 | 24,000 | 23,333 | 22,667 | 22,000 |
29,000 | 28,306 | 27,611 | 26,917 | 26,222 | 25,528 | 24,833 | 24,139 | 23,444 | 22,750 |
30,000 | 29,278 | 28,556 | 27,833 | 27,111 | 26,389 | 25,667 | 24,944 | 24,222 | 23,500 |
31,000 | 30,250 | 29,500 | 28,750 | 28,000 | 27,250 | 26,500 | 25,750 | 25,000 | 24,250 |
32,000 | 31,222 | 30,444 | 29,667 | 28,889 | 28,111 | 27,333 | 26,556 | 25,778 | 25,000 |
33,000 | 32,194 | 31,389 | 30,583 | 29,778 | 28,972 | 28,167 | 27,361 | 26,556 | 25,750 |
34,000 | 33,167 | 32,333 | 31,500 | 30,667 | 29,833 | 29,000 | 28,167 | 27,333 | 26,500 |
35,000 | 34,139 | 33,278 | 32,417 | 31,556 | 30,694 | 29,833 | 28,972 | 28,111 | 27,250 |
まとめ
フリーレント期間中の共益費に関する取り決めは、契約内容によって異なります。一部の契約では共益費も免除され、テナントは一定期間、賃料と共益費の支払いをしなくて済みます。
しかし、他の契約では共益費は通常通り支払う必要があります。どちらのケースでも、具体的な契約条件は契約書に明記され、テナントと貸主の合意事項に基づいています。従って、契約前に契約書を詳しく確認し、共益費についての取り決めを把握することが重要です。共益費の取り決めに不明点や疑義がある場合には、不動産仲介業者や法的アドバイザーに相談することをおすすめします。
共益費の取り決めによって、フリーレント期間中の経済的なメリットが大きく変わるため、慎重な対応が求められます。