IT企業向けオフィスの共通点とは
高いクリエイティビティが求められるIT業界では、欧米企業を中心にオフィスづくりの創意工夫を競い合っています。ここでは先進的なIT企業がどのような理念に基づきオフィス環境を整備し、運用しているのか、共通点を解説します。
1.オフィスの考え方に変化
IT環境の進展、人と人とのコミュニケーションのあり方の変化とともに、かつては「経費」と見なされていたオフィスが、従業員のモチベーションに大きく影響することが分かり、経営に欠かせない「投資対象」となってきています。
現在では、知的創造空間としての「働きやすいオフィス」、従業員の能力や創造性を激しい企業競争力の源泉ととらえ、それを最大限に引き出し、イノベーション創出につなげていくための創造的なオフィスの構築と運用が重要であると考えられています。
一方で経営の観点からすれば、業務がスムーズに遂行されるオフィスであることが重要となります。
つまり、この両方がバランスよく機能展開されていることが、理想的なオフィスと言えるでしょう。
2.コミュニティとして捉える
オフィス構築の大原則は、オフィスをコミュニティとしてとらえ環境づくりをすることです。
組織を円滑に機能させる「従業員間の信頼感」や「人的ネットワークを育む場」としてオフィスをとらえ、社内のコミュニケーションやコラボレーションの活性化を通じて、イノベーション創出につなげる環境作りが必要です。
そのためには、カフェ、ライブラリー、ラウンジ、開放的な内階段、エスカレーターなど、偶発的な出会いやインフォーマルなコミュニケーションを喚起するための休憩・共用スペースを効果的に設置することが考えられます。また、オフィスフロアのレイアウトにも工夫が必要です。マグネットスペースの設定や、コミュニケーションの場として部門間の壁を低くするなどの工夫が重要になってきます。
一方で、従業員一人一人のクリエイティビティが会社の生命線といっても過言ではないIT企業では、個々の効率を考え、個々の働きやすい環境も整える必要性があります。
理想的なオフィス環境としては、オープンな交流の場と、個人で集中出来るスペースの併設などの工夫が求められます。
3.大規模災害に備える
東日本大震災を契機に、大規模災害が発生した場合、いかにすばやく事業・生産活動を再開させることができるかをテーマとした 『BCP(事業継続計画)の策定』に今注目が集まっています。
情報が財産であるIT企業にとって、会社の運営上においても、また従業員の安全確保のためにおいも、オフィスの安全性は必ず守らなければならないオフィス環境の一つです。
BCP対策がなされているオフィスビルの選択や、企業ごとのISO登録にみられる情報セキュリティ、オフィスのレイアウトに考慮してオフィスづくりを進める必要があります。
オフィスビルのBCP強化施策メニューとしては、既存ビルでは耐震補強・省エネのための改修や非常用発電機・燃料タンクの装備などが挙げられます。また、BCPに対応できる設備仕様・立地条件を備えたオフィスビルへの移転、サテライトオフィスやバックアップオフィスの確保、食料・水・防災用品の常時備蓄、堅牢なITインフラの整備などが挙げられます。また、ISO登録によって従業員全員の安全性への意識向上を図ることも有用です。
4.働きやすいオフィスの追求
昨今、我が国では国を挙げて「働き方改革」に取り組んでいますが、「働き方改革=従業員の生産性向上」の視点からも、オフィス環境の創意工夫の重要性が高まっています。
先進的な海外のグローバル企業では既に独自に創意工夫したオフィスの構築・運用を実践しており、オフィスづくりの創意工夫を競い合う時代になっています。
これまでの効率性のみを追求した個性のない均質なオフィス空間ではなく、創造的なオフィス空間を構築・運用することが重要です。
また、経営資源をぎりぎり必要な分しか持たない経営ではなく、経営資源にある程度の余裕、いわゆる「組織スラック」を備えた経営を実践し、働き方にも「組織スラック」を取り入れる必要があります。創造性豊かで能力の高い人材の確保・定着のためには、企業は、創造的で自由なオフィス空間の整備と、柔軟で裁量的なワークスタイルへの変革を求められているのです。
オフィス構築段階で、会社の経営理念を取り込んだオフィスロケーションを選択、レイアウトを含めたオフィス環境を選択し、従業員のクリエイティビティを高め、生産性を向上させ、ひいては業績UP・企業のブランド力UPにつながる独自の創意工夫を求められています。
そして、運用段階では、ワークスタイルの変革を遂行していく必要があります。
激しい企業競争に勝ち抜くためにも、独自のオフィス環境づくりをご検討されてはいかがでしょうか。