フリーレント期間(賃料支払免除期間)の仕分や会計処理について解説

賃貸市場における「フリーレント」の提供は、新規テナントを引き付ける強力なインセンティブとなっています。しかし、このメリットを享受する一方で、企業は会計上の取り扱いに頭を悩ませることがしばしば。フリーレント期間中の賃料計上はどのように行うべきなのか、そしてこれにはどのような注意点が伴うのでしょうか。

この記事では、フリーレント期間の会計処理の基本的な考え方と、それに関連するポイントについて詳しく解説していきます。

目次

フリーレント期間とは?

フリーレント期間とは、賃貸物件(特にオフィスや商業施設など)の契約において、入居初期の一定期間、賃料を免除する、または大幅に割引する期間のことを指します。この期間中、テナントは家賃を支払う必要がないか、あるいは大幅に減額された家賃を支払います。

フリーレントの目的と特徴
  1. 契約のインセンティブ: 物件オーナーや不動産会社は、テナントを誘致するためや競合他物件との差別化を図るために、フリーレント期間を提供することがあります。
  2. 初期コストの軽減: テナントが新しい場所に移転や開業する際には、内装工事や設備導入などの初期投資が必要となります。フリーレント期間は、このような初期コストの負担を軽減するためのサポートとして提供されることが多いです。
  3. 期間の長さ: フリーレント期間の長さは、物件や市場の状況、契約の内容などによって異なります。一般的には数週間から数ヶ月の間となることが多いです。
  4. 契約の条件: フリーレント期間は、通常、契約の初期段階でのみ提供されます。また、契約期間が長い場合や、大きなスペースを借りる場合など、特定の条件下でより長いフリーレント期間が提供されることもあります。
  5. 経済的背景: 経済が不況の時や、オフィスの空室率が高い時など、テナントの確保が難しい状況では、フリーレント期間を提供することで物件の魅力を高める戦略が取られることがあります。

総じて、フリーレント期間は、テナントとオーナー双方にとってメリットがある制度として、多くの不動産取引において採用されています。

フリーレントが普及した背景

フリーレント、すなわち賃料支払免除期間の提供が普及した背景には、いくつかの要因が考えられます。以下に、その主な背景を解説します。

フリーレントが普及した背景
  1. 不動産市場の競争の激化:
    • 特に都市部のオフィスビルや商業施設などの不動産市場は競争が激しく、新しい物件や再開発物件が続々と出てくる中で、テナントを確保するための差別化が求められました。フリーレントはその一環として導入され、テナントの誘致やリテンションの手段として利用されるようになりました。
  2. 経済の変動:
    • 経済の不況期や不安定な時期には、企業の経営状況が厳しくなることが多い。このような時期に、フリーレントを提供することで、テナントの経営負担を軽減し、長期的な契約を獲得することが目指されました。
  3. 初期投資のサポート:
    • テナントが新しいオフィスや店舗を開設する際には、内装工事や設備投資などの初期コストが発生します。フリーレント期間を設けることで、これらの初期投資をサポートし、テナントの移転や新規開業を促進する狙いがありました。
  4. 物件の特性や位置:
    • 物件の立地や特性、竣工時期などによっては、即時にテナントを確保するのが難しい場合があります。そうした物件において、フリーレントを提供することで、他の物件との競争力を高める狙いがありました。
  5. 長期契約の促進:
    • フリーレントを提供することで、テナントに長期契約を結ぶインセンティブを与えることができます。長期契約を獲得することで、物件オーナーや管理者は安定した収益を確保することができます。

これらの背景を踏まえると、フリーレントは不動産市場の変動や経済状況、テナントのニーズに応じて、柔軟に対応するための戦略的な手段として普及してきたと言えるでしょう。

フリーレントの会計処理について

会計処理においては、フリーレント期間の存在はいくつかの考慮点を生じます。以下は、フリーレント期間の会計処理に関する一般的な考え方を示していますが、具体的な会計基準や法規制に従って適切に処理する必要があります。

フリーレント期間の会計処理
  1. 賃料平準化(直線化):
    • フリーレント期間を含む全契約期間にわたって、賃料の総額を平準化して認識する方法です。
    • 例えば、2ヶ月のフリーレント期間を持つ1年契約の場合、10ヶ月分の賃料を12ヶ月で直線的に配分します。
  2. 初期直接費用の資本化:
    • フリーレント期間がテナントの初期直接費用(例:改装費用)の補填として提供される場合、これらの費用を資本化し、リース期間中に償却することが考えられます。
  3. 収益認識の時点:
    • フリーレント期間中に受け取ったサービスや利益は、実際にサービスが提供された時点で収益として認識することが一般的です。
  4. 開示:
    • 金融諸表の注記等で、フリーレント期間やその他の特別な取り決めに関する情報を開示することが求められる場合があります。

最後に、フリーレント期間の会計処理に関しては、国や地域、使用している会計基準(例:US GAAP、IFRS、日本の企業会計基準等)によって異なる場合があります。

したがって、具体的な会計処理を行う際には、適用される会計基準や法規制を確認し、必要に応じて専門家の意見を求めることが重要です。

解約できない契約と解約できる契約による考え方

途中解約不可の契約と、解約可の契約で処理が異なります。

①解約できない契約

定期建物賃貸借契約の場合、途中で解約することができません。そのため、契約期間終了までに支払う家賃の総額が決められるということになります。フリーレントが付与されている場合、契約期間中の家賃総額を契約年数で均すことができます。

②解約できる契約

いわゆる普通型賃貸借契約の場合、フリーレント期間中の会計処理は初年度で行います。均した賃料で計上したくとも、途中で解約ができる条項がある場合は均した金額で計上することはできません。但し、普通型賃貸借契約でも、「当初3年間は解約できないものとする」など、途中解約が禁止され、家賃支払いが約束されているものは均した金額で計上することができます。

なお、フリーレントの会計処理について、現在の日本には明確な基準はありません。一般的に、フリーレント期間の賃貸料について、フリーレント期間は仕訳なしとする場合と、フリーレント期間も仕訳計上する場合の2通りに分かれます。

フリーレント期間の仕訳について

フリーレント期間の会計処理について、日本では明確な基準はありません。会計処理の仕方は「仕訳をするかしないか」の2パターンがあり、どちらを選択しても良いとのことです。

仕訳をする場合

仕訳をする場合、つまり会計上で特別な取り扱いを行う方法は、定期借家契約や解約禁止期間が設定されているような「契約期間が明確に定められている契約」において一般的に採用されます。この方法の核心は、契約期間全体にわたる「賃料総額」を「契約期間」で等しく按分して、各期間の賃料として計上するという考え方に基づきます。

例えば、フリーレント期間を含む2年間の契約で、フリーレント期間が3ヵ月、実際の賃料が坪単価20,000円の場合、21ヵ月分の賃料の合計を2年間で均等に分けて計上します。このようにすることで、実際にはフリーレント期間中に賃料を支払っていないにもかかわらず、会計上では定期的に賃料が発生しているかのように見せることができます。

特に、現在の入居ビルよりも賃料単価が高いビルに移転する場合、この会計処理方法を選択する企業も少なくありません。移転することで賃料単価が上昇するという事実を、会計上で目立たなくするための戦略として用いられることがあります。

しかし、この方法を採用する際には、会計基準や税務処理、また企業の内部経理の方針など、さまざまな要因を総合的に考慮する必要があります。したがって、具体的な取り決めや適用については、会計士や税理士などの専門家と十分な相談を行うことが推奨されます。

仕訳なしの場合

「仕訳なし」とは、具体的には会計上での特別な取り扱いや仕訳を行わない、すなわち通常通りの会計処理をする方法を指します。この方法は、契約期間に特別な定めがない場合や、特定の会計基準や方針に従っていない場合に採用されることが多いです。

具体的には、フリーレント期間中は賃料を計上せず、その期間が終了した後から賃料を通常通り計上していく方法となります。この方法の利点は、会計処理がシンプルであり、賃料の実際の支払い状況と会計上の処理が一致するため、わかりやすいという点が挙げられます。

一方で、この方法ではフリーレント期間の恩恵を受けることの経済的な効果や影響を会計上で明確に示すことができません。そのため、ビジネスの経営分析や決算報告を行う際に、フリーレント期間の影響を適切に反映させることが難しくなる可能性があります。

最後に、会計処理に関しては、具体的な取り扱いや適用すべき基準など、さまざまな要因が考慮される必要があります。したがって、正確かつ適切な会計処理を行うためには、会計士や税理士などの専門家との相談が必要となります。特に、企業の規模や事業内容、適用される会計基準などによって、適切な会計処理が異なる場合があるため、注意が必要です。

フリーレント期間の設定がある場合の注意点

フリーレント期間を設定する際には、以下の注意点を考慮することが重要です。

フリーレント期間の会計処理
  1. 契約内容の確認: フリーレント期間の詳細や条件、期間後の賃料の取り決めなど、契約内容を明確にしておくことが必要です。
  2. 会計処理: フリーレント期間の会計処理は複雑になることがあるため、専門家の意見を取り入れるか、適切な知識を持って取り組むことが求められます。
  3. 税務上の取り扱い: フリーレント期間の税務上の取り扱いには注意が必要です。税務署とのトラブルを避けるためにも、税務アドバイザーや公認会計士と相談することをおすすめします。
  4. 賃料の平均化: フリーレント期間後の賃料が高額になる場合、テナントの負担が大きくなる可能性があります。そのため、全契約期間を通じての賃料の平均化を検討することが考えられます。
  5. 更新時の取り決め: 契約更新時に再度フリーレント期間を設けるか、条件を変更するかの取り決めを明確にしておくことが重要です。
  6. その他の条件: フリーレント期間中に発生する共益費や管理費、修繕費などの取り決めも忘れずに確認しておくことが必要です。
  7. 市場動向の把握: フリーレント期間の設定は、不動産市場の動向や競合物件との比較に基づいて適切に決定することが望ましいです。
  8. 交渉の余地: フリーレント期間の設定は、テナントとの交渉によって変わることがあります。柔軟な対応を心がけることで、双方にとって良好な関係を築くことができます。

フリーレント期間を設定する際は、これらの注意点を踏まえながら、適切な判断を行うことが重要です。

まとめ

フリーレント期間は、テナントにとっては大きな経済的メリットをもたらすものですが、その会計処理は一筋縄ではいきません。

正確な会計処理が求められ、将来的な問題を避けるためには、この期間の取り扱い方法をしっかりと理解する必要があります。この記事を通して、フリーレント期間の会計処理とその注意点について詳しく解説しました。

しっかりと把握し、賢く活用することで、テナントとしてのメリットを最大限に享受できるでしょう。

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